栂尾高山寺 - 石水院の周辺

栂尾高山寺 (とがのおこうざんじ)、前掲で「女ひとり」の高山寺としてしまって、肝心のところを飛ばしてしまった。

高山寺はいうまでも無く、鳥獣戯画の残された寺であり、鎌倉期に明恵上人により再興された名刹である。高山寺を再興した僧明恵については、白洲正子の名著によって詳しく紹介されることになるが、最近ではカメラのC社のCMにまで登場するようになった。曰く、「花の西行、月の明恵」云々。

山里の小さな寺であるが、鳥獣戯画をはじめ、国宝重文の美術品も多く残され、なかでも白眉は国宝「石水院」であろう。

縁あって、半世紀前(!)の学生のころ、石水院の実測のため10日あまりだったかここに泊めていただいたことがあり、数年に1度はここを訪れたくなるのである。( ↓ More欄参照)


庫裏から続く渡り廊下で連なっている石水院であるが、今回はバスツアーの人たちで狭い玄関が渋滞(!)していたので、内部拝観はあきらめて、周辺の景色を2葉だけ。


      玄関前から、こけら葺入母屋造の石水院を望む。遠景の山もまもなく黄葉を迎えるだろう。
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      柔らかなカーブの白壁の塀に沿って降るのは狭い裏参道。コチラのほうがバス停に近い。
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     石水院1958

1958年の夏、友人と石水院の実測のために高山寺にお世話になった。実測といっても調査というほどのものではなく、デザインの勉強のために旧いいい建物を良く観察するのが第1の目的であった。担当教授にここを選んでいただき、お寺にもご紹介いただいた。

「女ひとり」よりも、「白洲正子」よりも以前のことである。「美空ひばり」がお姫さま役の時代劇のロケなどが行われ、「ここの瓦はひばりが壊した」とか、住職が笑っておられた時代である。


c0156404_8361364.jpg石水院は天皇の住まいの一部を明恵上人に下賜されて、ここは明恵の住居であったのではないかとされている。

建物は単純な間取りの平面で、開放的な空間が清滝川の深い谷を越えてゆったりとした形の対岸の山に面している。
(もっとも、当初はもう少し山側にあったのが、明治になってここに移築されたという。)

本堂ではないので、現在もとりたてて仏間の要素は少なく、ゆったりとしたリビングや客間として使用されてきたのではないかと思われる。

鎌倉期の住宅建築の遺構としては貴重な存在である。



c0156404_844671.jpg50年前の高山寺は、まさに山里の古刹。

訪れる人も日に数人、当時はもちろん拝観料などなく、石水院の縁側でゆったりと抹茶とお菓子を差し上げていたりされていたのも懐かしい。

現在は観光客が多く、畳や縁側には絨毯が敷き詰められて、縁側の檜や畳のの感触を楽しむのは不可能になっている。

蔀戸の上げ下ろしを朝夕手伝ったたり、住職の奥様が近在の娘さんたちに教えていたお茶の作法の客役を務めさせていただいたりもした。

作法の何もも分からない臨時の正客に、奥様は「ビールを飲むように飲めばいいのよ。」と。
Canon L2, Serenar 35mm/2.8, Neopan SS


ある日、日本美術史の森 暢先生が住職のところに訪れられ、その後に僕たち(2人)を神護寺に案内してくださった。なんでも先生は若い頃から神護寺に通い詰めての研究生活が長かったとのこと。

書院の客間に通されて話をうかがうことになった。もうひとつ、森先生の特技、「かわらけ投げ」を拝見することにもなった。

神護寺の「かわらけ投げ」は現在も人気で、2枚100円となっていた。
by kurakame | 2011-11-19 09:12 | M MONO | Comments(6)
Commented by seibo616 at 2011-11-19 09:24
kurakameさん:こんにちは。
素晴らしい光景に魅入っています。
建築デザイナーだったのですね!!
どおりで、素晴らしい感性のわけですよね。
Commented by kurakame at 2011-11-19 10:30
seiboさん、おはようございます。
ここのお寺もこんなに観光バスが来るとは、かつては想像もできませんでした。
かろうじて、人込みの隙間を狙ってのショットでした。
Commented by belage at 2011-11-19 17:27 x
いいですねぇ、観光客ではこういうスポットはゲット出来ません。
学生時代に測量でこちらまで来ていたんですか!びっくり。ボク
なぞは都内の箱根山と多摩川の測量でエライ目に会ったくらいで
(苦笑)
Commented by kurakame at 2011-11-19 20:45
belageさん、建物の実測は、何もないところから寸法を測って
平面、立面、断面、ひいては構造を図面にします。
ぼくらの学生時代は、すべてがデザインの勉強のためでした。
未だに図面の全ては完成していません。(笑)
Commented by getteng at 2011-11-21 07:43
kurakameさん、
月の明恵上人の名は毎週土曜日に聞いております。
Commented by kurakame at 2011-11-21 15:39
gettengさん、そうですね、毎週です。(笑)
ボクが世話になったころの高山寺は、
鳥獣戯画ぐらいしか知られていないマイナーな存在でした。
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